聖地巡礼なんて言葉が流行って久しいが、やはり学生時代の私にとっての聖地はトリノ市だったし、なかでもミラフィオーリ工場とリンゴット旧工場だった。
はじめてのクルマがFIAT X1/9という変わり種の私は、大学時代に自分と仲間のイタリア車のパーツを買うためにトリノへ出向いた。
本当は1990年の秋に訪れる予定だったのだが、たまたまイラク航空を予約していた私は、湾岸戦争のおかげで外務省の通達を受け渡航断念。二年後ようやく念願叶ってトリノ上陸を果たしたのだった。
今思えばイタリア語もできないのに、ポケット辞書さえあればなんとかなるだろうと、インド経由の南回りでローマ経由のトリノ入りしたが、最初の二日は疲労困憊でただひたすらホテルで寝呆けていた。
ようやくレンタカーを借りて、初めて訪れたリンゴットの感動はいまも忘れない。当時すでに工場でもなんでもなかったリンゴットだが、ここが多くのFIAT車の生まれ故郷だと知るだけで、なんとなくジーンとしたものだ。
それ以降はイタリアに移住してからも毎年2月になるとリンゴットとその脇の建物を使って行われる自動車バイクのノミの市「Automotoretro」に毎年出かけていたが、やはりいつ行ってもあの建物はいい。
1923年に完成し、およそ100年の歴史を持つこのリンゴット。屋上はなんと下の階で作った車を試走させることができるコースになっている。なんともイタリアらしい素敵なアイディアに満ちた建物だ。
ところが、そのリンゴットをステランティスグループとなったFIATが手放すという…。
まあ、別に所有者が誰であれ、建物が残るならいいのだが、なんとも言えない気持ちになる。
数年前、本当の聖地ともえるミラフィオーリ工場を売却ってな話になったときには、さすがにデモが起きて安心したが、昨今の世の中。それも新しいグループになり生き残りをかけるステランティスグループとしては、やはりこういったこともやむなしという判断なのだろう…。
いつも泊まるホテルもリンゴットだった。せめてホテルは続けてほしいものだ。
お値段据え置きでね!
それではまた近々。
A prestissimo!!