イタリアよもやま話〜Bollito Misto vol.37

      イタリア好きが嵩じてついにはフィレンツェに移住までしてしまったCollezioneイタリア特派員Noriによる、「イタリアよもやま話」。

 

      ちなみに「Bollito Misto」とはいわば「ごった煮」のこと。

 

      自動車、自転車、食事にワインやサッカーはもちろん、たまには真面目な社会的な?お話を勝手気ままにお届けします。

 

 

 

 

 

 

 

1月行く、2月逃げる、3月去る
よく言ったものだ。まさにあっという間の3月が終わり、桜の花もちらりほらり。
厳冬極まれりのNYからも桜の便りが届いたり、世の中すっかり春めいてきたようだ。
しかし、今年の春はちょっと違う。
今年の日本はこれまでとの大きな違いがあるように思える。
平日のトラックの数、年度末の工事の数。いろいろ懐かしい感じが蘇っているようだ。

金曜の夜など、あれれ?と思うほどタクシーやトラック、車の量がとにかく多い。
これはジワジワと日本経済にも春が近づいているのかと勘ぐりたくなる。
一方ヨーロッパはイタリアはもちろんのこと、まだまだ春は遠そうだ…。

 

さて、ここ3回続いた自転車シリーズもようやくこれで一旦終了にしようと思う。
今回は「L’Eroica」だ。

 

 

 

何度かここで登場してきたこのイベント名。戦前戦後の物資もない時代、舗装路すらままならぬ悪路を、国の威信をかけて走りぬいたサイクリストたちに敬意を表してはじめられたこのエロイカ。その名の通り「英雄」を意味するイタリア語だ。

 

自転車といえば、すぐにレースという感じがしてしまうのが、日本人の悪い癖だが、このエロイカはレースというより「いい大人の大コスプレ大会」というのが的を射た表現かもしれない。
もちろん、38km、75km、105km、205kmと分けられたコースは未舗装路を含む、それなりにハードなコースだ。

しかし、そこには10代の若者やもっと小さな子供。果ては76歳のおじいさんまでバシッとキメて出てくる「アウトドア社交場」だったりする。

10数名からスタートしたこのエロイカというイベントは、17年目を迎えた2013年ですでに抽選で選ばれた約6000名の公式参加者たちがひしめく。
そこにである。さらに選に漏れたが、あの雰囲気を楽しみたいと非公式に参加する世界中のファンが数千人加わる。

 

 

 

 

確かに世の中不景気だが、彼らはたった50ユーロで参加できる、夢の様に美しい風景と、決して楽とはいえないコースと、最高にウマいワインと料理には、その価格以上の圧倒的な価値がある。

このイベントが持つ得も言えない、現代社会に対するアンチテーゼのようなのどかさと豊かさを求めて世界各国から様々な人種が押し寄せる。

 

そこにあるのはただただ「楽しい」という共通の思いだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 


歴史と文化をリスペクトし、
今そこにある人生を愉しむ。
イタリア人の真骨頂を体現したともいえるこのイベントは、ついにイギリスやアメリカ大陸、アジアにも広まろうとしている。
自転車という趣味それじたいも立派な趣味だが、それ以前に、みんなで楽しく遊ぶという「豊かさ」を我々日本人はもっと大切にするべきではないだろうか?

 

 

 

 

それではまた近々

A prestissimo!