281 アニメが果たす役割

わたしはアニメだオタクだマンガだと騒ぎ始めた最初の方の世代に属する方だが、最近では映画興行成績のNo.1がアニメだったりと、もはや日本の主力産業と言ってもいいくらいのパワーをもちあわせている。

日本の文化を伝えるなんてだいそれた話をしている時期もあったけれど、実際のところは「日本の優れた才能と豊かな知識をもつ情熱家が集まる分野」というのが正しい気がしてならない。

人気漫画をよく見ると、実にシブいクルマが登場していたり、マニアがニヤリとしそうな有名映画のいちシーンがオマージュされていたりと、実に幅広い世界からの知識が蓄積されていて楽しい。

活字がメインだった時代(いまは果たしてそういえるだろうか?)には芥川賞だの直木賞だのと権威ある賞が並ぶが、もうそろそろ手塚賞をもっと権威あるものにしてもいいだろう。

だって、オスカーだって取りかねない勢いなわけだから…。なんなら、世界中のアニメーション制作者がこぞって日本の賞レースに参加するようなブランディングだって必要なはずだ。

年々増えていくアニメのTV放映本数だが(配信含む)、一方でおもしろい傾向もあるような気がしてならない。

それは人気アニメの情操教育的側面だ。

物騒な、そして理解不明な事件がおきまくる昨今の日本において、人々が最も障害なくすんなりと多くの人に受け入れられるコンテンツであるマンガやアニメ(むしろアニメが上位な気さえする。文字を読む必要がないしね)だが、そこで伝えたい、イイタイコトというのが、結構日頃日常のコミュニケーションのあり方だったり、親子関係や友人関係、恋愛感情の機微だったりするパターンがものすごく増えている。

多くの場合が転生モノで、つまり「もう一度やりなおせるなら、こうすべき、こうしたい」というタイプが多いのだが、「こういうときは、こう対処すればいい」というような示唆に富んだものが多いのが特徴だ。

実は交通事故死よりも遥かに多くなってしまった「自殺」という問題も、今の日本、いやもはや人類全体が抱える大きな問題の一つになってしまっている。個人的には環境問題よりも、よっぽどこっちを解決したほうがいいのではとさえ思う。

こうした現状に少しでもブレーキをかける役割を担っているのが、いまの日本のアニメのような気がしてならない。いや、むしろその役目を積極的に担ってほしい。

だって、もう家庭や学校でモラルやコミュニケーションを教えてくれるような世の中じゃなくなっちゃってるから…。なんだか、恐ろしい世の中だと真剣に思ってしまう。

それではまた近々。

A prestissimo!!