「モーターショーを考える」
自動車業界の春は、1月のデトロイトとともに明ける。続く3月のジュネーブにかけて、同業界はある種の年次の挨拶を重ねる重要なショーになっているのだ。言ってみれば「いやあ、去年はエライコッチャけど、今年はどないでっか? ぼちぼちでんなあ…。」というやりとりが飛び交う「ご挨拶」場だったりする。
もちろん、例えば今年F1復帰を果たすホンダさんが満を持してリリースする新生NSXなど話題の車も重要だが、一方ですでに売れているクルマをたくさん持っているメーカーは、そんなに大きな動きを見せなかったりするので、その温度差を見るのが実はショーの楽しみだったりする。
ともかく、「なんでお前は行ってないんだよ?」といわれそうだが、理由は簡単。寒いのだ。デトロイトは。マイナス10℃なんて正直御免だ。みんながんばれ!身体に気をつけてリポートしてくれ。
さて、このモーターショー。多くのクルマ好きが夢見るものだと思うが、年々いろんな問題が取り沙汰されている。例えば昨年のパリなどもかつての活気などどこへやら、フランスのメーカーの不調ぶりをそのまま形にしたようなシャビーなものだった。それでもルノースポールのようにホットハッチ(死語)を出し続けるど根性には敬服するしかないが、好調の兆しがみえる日本やドイツは今年のショーでは何を見せてくれるのか楽しみである。
そんな中、つい先日幕張メッセで静かに開催された「東京オートサロン」に行ってみた。正直メジャーモーターショーにはカウントされないものなのだが、ところがどっこい大変な熱気だった。もはや規模感では東京モーターショーに勝るとも劣らないものだし、何より「何でもアリ」という感じが非常に良い。
幕張という場所もあって、かつての最盛期の東京モーターショーを思い起こさせる「騒々しさ」に本当に楽しませてもらった。
ユーノス・ロードスターをランボルギーニ・ミウラに変えてしまったり(もちろんフロントエンジン!)、ボディをラッピングではなく彫刻してしまうようなものすごい技術まで、まさに百花繚乱。
こういう情熱溢れる会場こそがモーターショーの原点。日本は「若者のクルマ離れ」が問題視されているようだが、そんなことは全然なかった。もっとクルマが盛り上がるためにも、こうした熱を持った人たちがクローズアップされる環境が増えて欲しいと切に願うばかりだ。
自動車文化の先進国といわれる欧米がそうであるように、メーカーばかりではなくもっと草の根でクルマを愛する人達がショーに絡んでくれれば、クルマとの暮らしがもっともっと楽しくなるはずだ。こうしたオートサロンの「振り切った感じ」に明るい日本のクルマの未来を感じた。
まだまだ、日本はいけまっせ!