イタリアとは遠い国である。
約1万キロも離れているので仕方がないが、昨今はネットが発達したおかげでビデオ通話なんかもできるから、例えコロナ禍にあっても、日々イタリアと繋がっていられるし、仕事だってできる。
でも、現地ではこうなのに、なぜか日本では…。
てなことはまだまだ相当多い。
例えば今スイーツブームで話題のマリトッツォ。(知らない方はこちらへ)
ローマというかラツィオ地方のご当地スイーツだが、それ以外の地域でおなじみのものかといえばそうじゃない。全国区から海外進出したパンナコッタやティラミスとはあまりにも差がある。
「いま、日本じゃマリトッツォが流行ってるんだよ」
というと
「え? 何それ、あー。え? マリトッツォ?なんで?」
てな感じだ。
ところが、現時点では間違いなくイタリア人よりも日本人の方が知っている数は多いと思う。試しにネット検索してもらいたいが、maritozzoと入れても、最初に出てくるのは日本語の記事だったりする。もちろんシンプルなクリームパンなので、似たような者が他の地域でもたくさんあるからということでもあるので、決してマリトッツォをディスっているわけではないことをくれぐれもご理解いただきたい。単に、その商品名がイタリアを代表するような物ではないということが言いたいだけだ。
一方、この逆パターンがクルマでも存在している。
FIAT PANDA169。つまり先代のPANDAである。
私はちょうど169がデビューする頃にイタリアに移住したので、その隆盛を目の当たりにしていたし、その他の欧州各国でも、これでもかというほど目にした大ヒット作だ。
知っている方もいるかもしれないが、Nuova(NEW) PANDAとして2003年に登場したこのクルマは、実は当初はパンダを名乗る予定ではなかった…。
いつも「あの」偉大な141の後継車として比較されるものの、コンセプトこそはイタリアの国民車たる「外は小さく中は広く」を守った一台であっても、パンダの正式な血統ではなかった。
本当はGINGO(ジンゴ)という名前でデビューを飾る予定だったベルトーネデザインの169は、ルノーから
「ウチのトゥインゴに名前似てる!」
てな横やりが入り、急遽新パンダとしてデビューした経緯がある。
イタリアでも日本でも「えー? これが二代目のパンダ????」
みたいな反響だったそうだが、そりゃそうだ。
そもそもの起こりが違うのだから…。
しかし、デビューしてからは乗ってみると良い! ということで評判が評判を呼び、投入こそ遅れたが日本未導入のディーゼルモデルの大ヒットと相まって、気づけば大ロングセラーのヒットモデルとなった。
シティカーとしての大きさ、圧倒的な運転のしやすさ、小回りは効くし、なんといっても4ドアなので使い勝手が抜群。これはパンダではないという証でもある…。
なので、ファミリーはもちろん、小学校の先生のアンジェラも、自転車屋のロベルトも、大げさではなくみんなが乗っていた。人や荷物を一杯載せてすいすいと走る姿は本質的には立派に141パンダの後継車としての役割を十二分にこなしていたのだ。
つづく>>
それではまた近々。
A prestissimo!!