イタリアよもやま話〜Bollito Misto vol.34

      イタリア好きが嵩じてついにはフィレンツェに移住までしてしまったCollezioneイタリア特派員Noriによる、「イタリアよもやま話」。

 

      ちなみに「Bollito Misto」とはいわば「ごった煮」のこと。

 

      自動車、自転車、食事にワインやサッカーはもちろん、たまには真面目な社会的な?お話を勝手気ままにお届けします。

 

 

 

 

 

 

 

東京マラソンがまた大盛況のうちに開催された。
日本のみならず、世界中でマラソンをはじめとするフィットネスが大流行している。口の悪い人は「お金がかからないから…。」という。
ちなみにこれ、日本でもイタリアでも同じことを聞く。元体育会としてはちょっと意地悪なモノイイだなと思ったりはするが…。

 

 

 

 

誰でも(練習さえつめば)参加できて、健康にもイイ。そりゃ人気が出ますわな。ちなみにフィレンツェでも市民マラソンは盛んで、年に一度街中を走る大きなレースがある。美しい景観と相まって、世界中からランナーが集まる大イベントに成長しつつある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このマラソンと並んで人気が高いのが自転車だ。今回からは自転車の話を少々。
ちなみに、いうまでもなくイタリアやフランスは自転車のメッカ。
サンデーライダーから地元のチームなど相当数の自転車が路上にあふれている。
週末ともなれば、公道封鎖(臨機応変に彼らが通過する僅かな時間だけの封鎖)で、地元団体や警察もこれに協力する。

 

 

そんな自転車にも大きなムーブメントが起きつつある。現代のカーボン車ではなく、クロモリ鉱パイプで作られた、いわゆる昔の自転車、つまりビンテージ・バイクの波である。
「L’Eroica」通称「エロイカ」、地元での呼称「レロイハ」という1987年以前に生産され、今のようなクリート式でなく、ベルトで靴を固定する「オールド・スクール」な自転車で、美しいワインやオリーブ畑満載のトスカーナの未舗装路を爆走するイベントだ。

 

絵画になりそうな美しい景色と、色とりどりでオシャレな旧い自転車で和気あいあいと走り、ワインや美味しい食べ物に溺れる、そんな大人のイベントである。
1997年にスタートしたこのイベントは、最初こそ数十人でスタートしたいわば集会だった。地元の英雄「ジーノ・バルタリ」(イタリアで知らぬ人は居ないほどの王・長嶋級の大人気スポーツ選手)が活躍した30年〜50年代の環境そのままに、当時の雰囲気を味わおうというのがそもそもの起こりである。

 

高度に発達した素材による現代の自転車は、市販車やF1などを見てもわかるように、圧倒的な性能と利便性や快適性を持つのだが、ともすると「軽くて安っぽい」感じになってしまっているのは否めない。ロードレーサーと呼ばれるたぐいの自転車は歴史が長い故に、現代のMTB然としたゴチャゴチャ感に嫌気をさしている人たちも多く、その反動がこうしたイベント生んでいるとも考えられる。それより、もっとシンプルな理由としては、人がその手で作り上げたという点で、どこかしら「情熱」や「愛情」が感じられるからだろう。なにより、独特の「重さ」を持ち合わせている。

 

人間そのものが、そうした「重さ」に価値を見出す本能があるのか、自転車や自動車のみならず、時計やファッション、ありとあらゆるものに原点回帰的なムーブメントが起きているのは偶然ではないのだろう。
最近では日本でもその流れが生まれていると肌で感じる部分も多い。
次回はその自転車の深遠なる世界をご紹介しようと思う。

 

 

 

 

それではまた近々

A prestissimo!